独占インタビュー

「同じものでなく少しずつ変化を」被災を乗り越えた佐野ラーメン店主が語るご当地の未来

こんにちは!ラーメンインタビュアー岡崎美玖です。

普段は東京のお店をメインに取材させていただいてますが、今回は筆者の地元のご当地ラーメン編です。

今回ご紹介するのは、栃木県佐野市にある佐野ラーメンを代表する銘店。

昨年の台風19号の影響により、秋山川の堤防が決壊するなど広範囲に浸水した栃木県佐野市。この台風で一時休業に追い込まれるも、営業再開を目指し奮闘した「麺屋ようすけ」に密着しました。(取材当時2020年1月)

早速ご紹介していきましょう!

絶品佐野ラーメンを求めて「麺屋ようすけ」へ

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東武佐野線田島駅より徒歩1分のところにある、「麺屋ようすけ」

大きな看板と共にお出迎えです。

佐野プレミアムアウトレットから10分ほどで佐野ICも近いことから車で来店する人も多いため、広い駐車場も完備されています。そして目の前に現れたのはどんと大きく構えられた佇まい…!

「麺屋ようすけ」は、佐野ラーメンの代表格とも言える総本山田村屋の流れを汲む田村屋系の佐野ラーメン店

食べログ「ラーメン百名店 EAST」2018、2019と2年連続で選出。佐野ラーメン激戦区である佐野市内に位置していますが、著名人も多く来店しており、人気を博しています。

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店内に入ると、まず目に入るのが「一麺一心」という文字。これは店主の田邉さんの修業先である田村屋から受け継がれているもの。

「ラーメン屋を始めて最初に心を込めて作った一杯から、最後に作る一杯まで同じ気持ちで作れるようにという意味を込めて、最後まで一杯に対する熱い気持ちを持ちたい」と田邉さんは話します。

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ずらりと並ぶ著名人のサイン…!!

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広々とした店内にはテーブル席に加えてお座敷も!そのため、家族連れも多く来るのだとか。

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全体のメニューはこんな感じ。

今回は「ラーメン(650円)」をいただきます!

プリッとした青竹打ち自家製麺が特徴的な「ラーメン」

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いざ、着丼です。

澄んだスープには、これぞ佐野ラーメンとも言える具材たちが勢ぞろい。佐野ラーメンは佐野市内に200店舗以上存在するといわれていますが、各々独自の特徴があり異なるので面白いのです。

麺の上には2枚のチャーシュー、メンマ、ほうれん草、なると、葱がトッピングされています。

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熱々の澄んだ薄い醤油色のスープは、一見あっさりに見えますが、実際に一口飲んでみると甘みとコクを強く感じる一杯…!!

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田邊さんによれば、「あっさりなのにコクやパンチがあるスープを目指し、コシのある麺に負けないように出汁感を強く意識している」とのこと。

がっつり惜しまずガラなどを入れ、足し算形式で作り上げられた動物系のスープは、約6時間煮込まれているのだそう。

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タレに使う醤油は2種類をブレンド

スープの土台を底上げする為に、北海道羅臼産の天然昆布をふんだんに使い、旨味に厚みを出しているのだとか!

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そしてスープに合わせた青竹打ち自家製麺がこちら!

青竹打ちとは?
-長い竹の筒に足をかけ、体重をかけながら麺生地を延ばす中国で生まれた伝統的な製麺技法。
栃木県佐野市のご当地ラーメン「佐野ラーメン」は、数多くのお店がこの手法を継承している。
ちなみに、少し東京から足を伸ばせば新横浜ラーメン博物館にて青竹打ち体験もできちゃいます!(公式HPはこちら

噛むとまず驚かされるのが麺の弾力。程よくコシのあるプリッとした食感が特徴的です。ですが決して”固茹で”というわけではなく、この絶妙さがたまらない…

というのも佐野ラーメンといえば、一般的に柔らかめのピロピロ麺が多いので、しっかりとしたコシのある麺は珍しいのです。茹でてもコシが出るように丁寧な生地作りが重要なポイントなのだとか。これが本当に美味!

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豚バラチャーシューは、デフォルトで2枚。一口食べれば肉厚でずっしりとしたボリューム感にきっと驚くはず。そしてこれがまたびっくりするくらいとろとろほろほろで、箸で持てば今にも崩れそうな柔らかさ…!

口に入れれば溢れんばかりの肉汁にノックアウト。

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そして、サイドメニューにぜひおすすめしたいのがこちらの餃子(1人前3個入り)。

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一般的な餃子の1.5倍ほどあるずっしりとした大きな餃子は、こんがりとしたいい焼き目。もっちりした厚い皮に包まれ、割ればキャベツと豚の甘みがダイレクトに口の中へ!中身までぎっしりな餃子です。これは3個が丁度良い。最高。

ごちそうさまでした!

【独占①】ゴルフ講師時代にレッスン生としてやって来た名店店主との出逢い

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高校・大学時代はゴルフ部に所属し、卒業してからはゴルフメーカーへ就職。独立後には問屋業を営んだり、ゴルフのレッスン講師を勤めたり…これまた異色の経歴の持ち主である「麺屋ようすけ」店主の田邉さん。

今回のインタビューでは、お店の誕生秘話に加え、台風19号による大規模な被災により一時営業休止をせざるを得ない状況から一念発起し、営業再開に至るまでのお話を伺いました。

ーーなぜラーメン職人の道に進もうと思ったのですか?

「元々ゴルフ関係で仕事をしていたのですが、ゴルフレッスン講師をしていた中で、田村屋の店主である田村章(あきら)さんが生徒として来たことがきっかけですね。予てよりラーメンの食べ歩きもしていて、”いつか飲食をやりたい”そんな思いの中での出会いでした。年齢も近かったということで仲良くなり、一緒にいることが多くなりました。

そんな中、「教えるから、やる?」という田村さんの一言で修行をすることを決め、師弟関係が逆になっちゃいました(笑)

ーーそんな背景が…!!独立までにどのくらい修行をされたのですか?

「最初は前職と掛け持ちをしていました。夜11時くらいにレッスンが終わり、その後夜中の2〜3時ごろまで麺打ちに(田村さんが)付き合ってくれて…夜中はひたすらに麺打ちをしていました。麺の工程だけで3年ほど、実際に田村屋に入ってから2年半、合わせると5年半ほど修行していました。」

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(こだわりの詰まった麺は、茹でる際に大きな鍋へ。手の感覚で茹で具合を微調整する姿は、職人魂を感じる熟練の技です。)

【独占②】被災を経験して感じた幾多の支え

ーー先日の台風19号で、浸水被害に見舞われたとのことですが、当時はどのような状況だったのでしょうか。

「秋山川が氾濫したというニュース速報が流れて、次の日のガラの準備などをしていたので、一度食材をしまいに来たのですが、その時は大丈夫そうだな…と思いながら自宅に帰ったんです。それが10月12日の夜23時頃のことでした。自宅からお店が見えるのですが、13日の0時半頃から店の駐車場の方から浸水していく様子が見えて…朝お店に行くと30センチほど浸かっており、想像以上にひどい状況でした。」

当時、店内は泥で十五センチほど埋まり、いすやソファも散乱。冷蔵庫七台、冷凍庫三台など厨房機器類の被害は約一千万円に上るとみられた。(参考:『東京新聞』「佐野らーめん 再起奮闘 台風19号で浸水」2019年10月23日 夕刊)

ーーそこから約1ヶ月で営業再開…!リニューアルオープン、おめでとうございます。切り替えなども中々難しかったのではないでしょうか?

色々な人に助けられました。もちろん従業員もそうなのですが、常連さんや、業者の方、仲間内のおかげもあり、おかげさまでだいぶ作業が進みました。」

ーー営業再開日である11月26日は7周年記念ということで、100円ラーメンを振舞われたとか…!!ご自身も大変だったと思います。

「元々周年イベントで”100円ラーメン”というのは毎年行っていて、災害があってそれで終わりにするのは嫌だったんです。皆様に色々助けて頂いた部分も大きくて、感謝の気持ちも込めて開催を決定しました。被災した日から、「100円ラーメンは絶対にやろう」と決めていましたね。」

ーー営業再開を経て、何か心境の変化などはありましたか?

1からもう一度見つめ直して頑張っていこうと思いましたね。なってしまったものはしょうがないなと。事務の人も前向きに片付け作業をしている姿などを見て、落ち込んでいるよりは1日も早く再開しようという気持ちでいました。

支えて頂いた方々になるべく恩返しができるよう、ラーメン作りに励んでいきたいなと思っています。」

【独占③】「こんなの佐野ラーメンじゃない」ーーそう言われても日々進化し味を磨き続ける理由

ーー佐野ラーメンは佐野市内だけでも数多く存在しますが、「麺屋ようすけ」ならではのこだわりはなんですか?

「スープはご当地ならではの出汁感を意識し、麺は”よくある佐野ラーメン”という感じのものではなく、コシをなるべく出してしっかりと生地作りから丁寧に行っています。ただ麺を早く上げるのではなく、しっかりと茹でてもコシが出るような生地作りをしています。」

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ーー生地作りもご自身が…?

「はい!朝7時頃から生地作りを始め、こねて寝かせています。そして夕方頃〜夜に麺を打ち始めますね。」

ーー8周年目に入り、今後はどのような展望を見据えていますか?

「ラーメンに対しては常に情熱を持ち続け、常に良くなる方向を考えて手間暇を惜しまず日々勉強していきたいと思います。

また、”ラーメン屋”というとブラックなイメージもつきやすくて、労働環境の改善にも努めていきたいなと思っています。」

ーーなるほど。それこそ都内にいらっしゃる時もよく食べ歩きなどもしていらっしゃいますよね。食べ歩きからヒントを得たりもするのですか?

「あまり載せていないのですが、休みの日にはかなり食べ歩きをしています…!(笑)

どんなラーメンを作っているのか、今の流行りはどういうものなのか、などを研究しています。」

ーー田邉さんにとってご当地ラーメンである佐野ラーメンと、今後どう向き合っていこうと考えていますか?

ずっと同じものを作り続けていくばかりではご当地ラーメンも廃れていってしまうと思うんです中には「こんなの佐野ラーメンじゃない」と言われたこともありました。ですが、気にせずに日々研究を重ねて「美味しい」と感じる自分の信じる味を貫いて行きたいですね。

“ご当地で同じものを作っていればいいよね”というのではなく、ご当地の中でも少しずつ変化して行けるものがあると思うので、そこには常に敏感であり続けたいなと思っています。」

取材後記

7周年イベントを迎えようとした矢先、台風19号により大規模な被災に見舞われた「麺屋ようすけ」。食材も機器も全滅という絶望的な状況から、前を向き新たな一歩を踏み出しました。

「被災を通して、色々な人に助けられてやってこれたんだなと再確認しました。自分の中ではいい経験だったなと思います」と語る田邉さん。

被災を乗り越え味を守り抜き、どこか以前にも増したパンチ・力強さをも感じる逸杯が味わえます。是非ご賞味あれ。

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